2026/08/18

大学サッカーのリアル#4:学生主体チームのリアル──大学サッカーは、小さな社会の縮図だ

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白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員

「大学でもサッカーを続けたい」

1%でもそう思う気持ちがあるのであれば、まずはその気持ちを大事にしてほしい。

大学には、自分より上手い選手がいるし、最初からトップチームに入れるとは限らない。高校でレギュラーだった選手が、大学ではBチームから始めることもある。

これまで3回にわたってお伝えしてきた通り、関東の激しいリーグで毎週自分を試す道がある。地方で、自分に合う環境を見つけながら全国を目指す道もある。最初にトップチームへ入れなくても、公式戦を重ねながら居場所をつくっていく選手もいる。

進路に正解はない。けれど、見ないまま選択肢を消すのはもったいない
本気で向き合った末に、サッカーを続けない選択をすることになったとしても、それでいいと思っている。
それくらい、進路先で打ち込みたいことに出会えたのであれば

今回は、大学サッカーでよく耳にする「学生主体」とは何なのかを一緒に考えていきたい。

INDEX

1. 大学で増えるのは、サッカー以外の仕事ではなく、主体性

高校でも、キャプテンや学年の中心になってチームを動かす選手はいる。

ただ、高校では監督やコーチが最後に方向を示してくれることが多い。練習で何を積み上げるか。試合でどう戦うか。チームが迷ったとき、誰が責任を持って決めるか。

大学に入ると、その一部を学生が担うようになる。

連敗した週に、学生同士で話し合う。練習の空気が悪いなら、誰かが変えようとする。遠征費が足りなければ、会計を担当する学生が数字と向き合う。発信が止まれば、広報を担う学生が動く。
これは「サッカー以外の面倒な仕事が増える」という話ではない。

チームを良くするために何が必要かを考え、自分たちで手を打つ経験が増える、ということだ。

筑波大学蹴球部では、会計、広報、審判、トレーナーなどの役割を部員が担い、学生たちが運営の課題を話し合う。横浜国立大学体育会サッカー部では、学生自身が必要な指導環境を考え、外部指導者を探して交渉したこともある。

もちろん、すべての大学が同じ形ではない。

でも、大学サッカーで問われるのは「自分は何をしてもらえるか」だけではない。チームに足りないものを見つけたとき、「じゃあ、自分たちはどうする?」と考えられるかだ。

その経験は、社会に出てからも活きると確信している。

2. いちばん難しいのは、ベンチ外の仲間と向き合うこと

学生主体のリアルは、勝っているときよりも、うまくいかないときに出る。

例えば日曜に試合があって、ベンチに入れなかった選手がいるとする。チームが勝っても、その選手だけは素直に喜べないかもしれない。

だけど火曜の練習で、その選手がボールを集めている。ビブスを配っている。アップの声を出している。

「そんなことをして、何になるんだろう」と思う瞬間もあるはずだ。

実際に学生主体のチームで主将を務めた選手は、登録メンバーに入れない仲間にも「自分はチームの一員だ」と思い続けてもらうことを大切にしていた。

きれいごとだけではできない。試合に出ている選手が、出ていない選手の悔しさを完全に分かることはないからだ。

それでも、良いプレーを見逃さずに伝える。話を聞く。次に期待していることを言葉にする。チームから離れそうな仲間を、つなぎ止める。

その積み重ねが、練習の強度を落とさない。チームの信頼をつくる。

出場していない時間に何をするかは、選手として大きな意味を持つ。自分の課題に向き合う。相手チームを見て気づいたことを共有する。後輩に声をかける。次に来るチャンスをつかめる準備を続ける。

サッカーを続ける理由は、プロを目指すことだけではない。

思うようにいかない時期に、どう自分とチームに向き合うかを学べることも、大学でサッカーを続ける価値の一つだと思う。

3. 自分たちで決めた勝利の味は一生忘れない

学生が考え、決めて、動くチームでは、意見がぶつかる。

よく、こんなテーマで議論が起こる。
・練習をもっと厳しくしたい人もいる
・授業やアルバイトとの両立を考えたい人もいる
・今のやり方を変えたい人もいれば、そのまま続けたい人もいる
・チームのことを深く考えていない人もいる

状況を変えようとミーティングをしてみても、誰も話さない日もあれば、グラウンドの外では不満を言うのに、本人の前では何も言えないこともある。

気まずくても、チームで勝つために学生同士で動かなければならないことは、たくさんある

そこで、自分の言葉で話したり、意見の違う相手の話を聞いたりする。
そして、決まったことを全員で実行してみる。

それで練習の空気が変わり、試合で結果が出たとき、勝利の見え方が変わる。
誰かに与えられたメニューをこなした結果ではなく、自分たちが試行錯誤した結果になる。
まさしく、自分たちでつかみ取った勝利だ

大学サッカーは、ピッチで上手くなるための4年間であり、仲間と一つのチームをつくる4年間でもある。

4. 大学を見に行くとき、大切にしてほしいこと

練習参加や試合見学に行くときは、プレーのレベルだけで判断しないでほしい

・練習前の円で話をするとき、誰がどんなことを話しているか
・練習後、誰が最後まで片付けているか
・試合に出ていない選手は、どんな声を出しているか
・先輩と後輩は、どんなふうに話しているか。

そこには、そのチームの日常が出る。
大学を選ぶことは、強いチームに入ることだけではない。

4年間、本気でサッカーを続けながら、自分がどんな選手になり、どんなチームメイトになれるかを選ぶことでもある。

続けたい気持ちが少しでもあるなら、関東だけ、地元だけ、トップチームだけで決めないでほしい。

まだ見ていない大学のなかに、自分が4年間をかけられる場所があるかもしれない。

白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員

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