2026/09/02

大学サッカーのリアル番外編:主役は、最初から主役だった選手だけではない。|総理大臣杯で見る、大学サッカーの現在地

この記事は9分で読むことができます

白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員


全国大会に出場する大学と聞いて、どんなチームを想像しますか?

全国から有名選手が集まり、リーグ戦でも常に上位を走る強豪校。高校時代から注目され、入学後すぐに試合へ出る選手。そんな姿を思い浮かべる人も多いかもしれません。

しかし、全国への道は一つではありません。

初めて全国大会に出場する大学もあれば、11年ぶりに戻ってきた大学もあります。高校時代に背番号10を背負いながら、大学では3年間トップチームの公式戦に出られなかった選手もいます。怪我やカテゴリー降格を経験し、サッカーを辞めることや、プロ以外の道を選ぶことを考えた選手もいます。

それでも準備を続け、最後の夏に全国を目指している選手たちがいます。

今回は、9月2日に開幕する「第50回 総理大臣杯 全日本大学サッカートーナメント」から、全国への異なる道を歩んできた3チームと、出場機会を待ち続けた3選手を紹介します。

勝敗だけでは見えない大学サッカーの面白さと、自分に合う進路を考えるためのヒントが、そこにあります。

INDEX

1. 夏の大学日本一を決める「総理大臣杯」

総理大臣杯は、大学サッカーの夏の日本一を決める全国大会です。

2026年度の第50回大会は、9月2日から12日まで宮城県・岩手県で開催されます。全国9地域の予選を勝ち抜いた32校が出場し、全試合が一発勝負のノックアウト方式で戦います。

年間のリーグ成績などをもとに出場校が決まる冬のインカレとは異なり、総理大臣杯は各地域のトーナメント予選を突破した大学が全国へ進みます。予選を勝ち抜けば、リーグ戦の順位は問われません。

実際に今年は、前回大会王者の東洋大学と、2025年度インカレ王者の筑波大学が関東予選で敗退しました。一方で、リーグ戦では苦戦している大学や、全国大会への出場経験が少ない大学も予選を勝ち抜いています。

積み重ねが問われるリーグ戦と、その日の勝負がすべてを決めるトーナメント。それぞれに異なる難しさがあります。

総理大臣杯の面白さは、知っている大学が勝ったかどうかよりも、どんなチームが一発勝負を勝ち抜いてきたのかにあります。

2. 全国への道は一つじゃない|注目チーム3校

法政大学|勝ち切る力を証明した関東王者

優勝候補として注目したいのが、関東第1代表の法政大学です。

関東予選のアミノバイタルカップ(関東大学サッカートーナメント)では、全国出場を懸けた明治大学戦がPK戦の末、11人目までもつれる激闘を8-7で制しました。決勝では、関東2部ながら快進撃を続けていた専修大学を2-0で破り、2018年以来8年ぶりに関東トーナメントを制しました。

法政大学は、2017年と2021年に総理大臣杯で優勝し、2023年にもベスト4へ進んでいます。大会経験に加え、苦しい試合を勝ち切る力を予選ですでに証明しました。

ただし、強豪大学に入ることは、選手にとって激しい競争の中に身を置くことでもあります。どのような選手が先発し、ベンチやセカンドチームから誰がチャンスをつかむのか。結果だけでなく、選手層や競争環境にも注目です。

観戦するときの問い:強豪校の競争環境で成長するためには、どんな力が必要だろう?

甲南大学|初めて全国に立つチーム

関西第5代表の甲南大学は、創部初の総理大臣杯出場です。

2025年度に関西学生リーグ1部で3位となり、インカレに初出場。2026年からは、Jリーグの複数クラブでプレーした松岡亮輔監督が就任し、新体制1年目で新たな全国切符をつかみました。

一方、2026年度の前期リーグは9位。シーズンを通じて安定して上位を走ってきたわけではありません。それでも、関西予選の立命館大学戦をPK戦の末に制し、最後の出場枠に滑り込みました。

新しく変わろうとしているチームが、全国の舞台に立つこともあります。チームが変化するタイミングで入学し、新しい歴史をつくる側に回る。そんな大学サッカーの選び方もあります。

観戦するときの問い:成長途中のチームに入ることには、どんな面白さと難しさがあるだろう?

北陸大学|11年ぶりに全国へ戻った挑戦者

北信越第2代表の北陸大学は、2015年以来11年ぶりに総理大臣杯へ出場します。

北信越予選の代表決定戦で対戦したのは、2024年大会準優勝、2025年大会ベスト8の新潟医療福祉大学。延長戦で勝ち越されながらも追いつき、PK戦の末に4-3で制して全国切符を獲得しました。

北陸大学の特徴として語られているのが、特定の選手に頼らず、ベンチ外の選手も含めて全員で勝利を目指す一体感です。新潟医療福祉大学戦では、選手たちが試合中にシステム変更を判断し、同点ゴールにつなげました。

答えをもらうのではなく、自分たちで決める。北陸大学のピッチでは、それが実際に起きています。

観戦するときの問い:自分は、どんなチーム文化の中で力を発揮できそうだろう?

3. 出場できなかった時間を、成長に変えた3選手

チームごとに全国までの物語が違うように、選手がたどる道もそれぞれです。

今回注目したい3人には、長期間トップチームのリーグ戦に出場できなかったという共通点があります。しかし、その時間の過ごし方や、チャンスをつかむまでの方法はそれぞれ異なります。

下川翔世|Iリーグで広げた、自分の可能性

大阪体育大学4年の下川翔世選手は、東福岡高校時代に背番号10を背負っていました。

しかし、大学では強力な先輩たちとの競争に入り、最初の3年間はAチームの公式戦に出場できませんでした。3年次にはIリーグでプレーし、インサイドハーフなど新しいポジションにも挑戦しました。技術だけでなく、複数の役割を担える選手へとプレーの幅を広げました。

本人は「Iリーグが一番成長できた」と振り返っています。

4年目の2026年、下川選手は大阪体育大学の背番号10を任され、開幕から先発に定着しました。関西学生リーグの甲南大学戦では、89分に大学リーグ初得点となる決勝ゴールを決めました。

自分に置き換えてみる問い:試合に出られない時間があったとして、自分はそこで何を身につけようとするだろう?

逢坂スィナ|待つだけでなく、自分からチャンスを求めた

桐蔭横浜大学4年の逢坂スィナ選手は、柏レイソルU-18の出身です。怪我などの影響もあり、大学3年間は関東大学リーグへの出場がありませんでした。

3年次にはセカンドチームで社会人サッカーの全国大会を経験しましたが、トップチームのリーグ戦には立てないまま。4年生になる前には、サッカーを辞めることも考えたと明かしています。

それでも準備を続けた逢坂選手は、監督と30〜40分ほど話し込み、自分がどのように評価されているのかを確認しました。そして、待つだけではなく「チャンスをくれ」と自分から伝えました。

2026年5月、関東大学リーグに初出場しました。5月30日の駒澤大学戦では初先発をつかみ、大学リーグ初得点と1アシストを記録しました。この日は、本人の22歳の誕生日でもありました。

自分の現在地を確かめるのは、怖さも伴います。それでも逢坂選手は、聞きに行く方を選びました。

自分に置き換えてみる問い:自分の現在地を知るために、誰にどんな質問をしてみたいだろう?

金指功汰|プロ以外の道を選んでも、姿勢は変えなかった

早稲田大学4年の金指功汰選手は、早稲田実業高校出身のセンターバックです。

3年次からAチームに絡みましたが、リーグ戦ではベンチ入りしても出場機会を得られず、途中でBチームへ降格しました。関東大学リーグ未出場のまま最終学年を迎えました。

思うように出場できない時間を経験し、卒業後はプロではなく一般企業への就職を選びました。それでも、大学サッカーに取り組む姿勢を変えることはありませんでした。

2026年、関東1部へ復帰した早稲田大学で開幕から先発を獲得し、前期リーグ6試合に出場しました。8月の早慶戦(早慶サッカー定期戦)では、コーナーキックから先制のヘディングゴールを決めました。

進路が決まった後も、金指選手はセンターバックとしてピッチに立ち続けています。

自分に置き換えてみる問い:目標が変わったとき、自分は今いる環境で何を大切にするだろう?

4.「強い大学」と「自分に合う大学」は、別の話

今回紹介した3校と3選手から分かるのは、大学サッカーにはさまざまな挑戦の形があるということです。

全国優勝を目指す強豪校で激しい競争に挑む。初出場の大学で新しい歴史をつくる。選手主体のチームで、自分たちで考えながら戦う。トップチームに入れない期間に、Iリーグやセカンドチームで力を蓄える。

正解は人によって違います。考えたいのは、自分はどんな環境なら、うまくいかない時間にも挑戦を続けられるかということです。

大学を調べるとき、成績表に載らないところにこそ判断材料があります。

・トップチーム以外に、どのような公式戦があるか
・カテゴリー間の入れ替えや昇格の機会があるか
・各カテゴリーに指導者が配置されているか
・選手が自分で考え、意見を伝えられる文化があるか
・サッカー以外に何を学び、どんな進路を選べるか

進路選びは、入学先を決めた日から始まります。

入学後、思うようにいかないときに何をするか。誰と対話し、どのような環境で準備を続けるか。そこまで想像することが、自分に合う大学を選ぶ第一歩になります。

5. 総理大臣杯を、勝敗以外の視点で見てみよう

2026年度の総理大臣杯は、JUFA公式YouTubeで全試合がライブ配信される予定です。気になる試合を見つけたら、勝敗と得点者だけでなく、次の3点にも注目してみてください。

  1. ・どんな選手が交代で出てくるか
    • 先発以外の選手層や、チャンスの与えられ方が見えてきます。
  2. ・劣勢になったとき、誰がチームを動かすか
    • 指導者が細かく動かすのか、選手同士で解決するのか。チーム文化が表れます。
  3. ・気になった選手が、どんな道を歩んできたか
    • 出身高校や過去の出場歴を調べると、大学名だけでは分からない成長の物語に出会えます。

白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員

    本気の第一歩を!

    LINE公式アカウントでは
    大学情報を検索したり
    いつでも気軽に相談できます
    LINE サンプル

    日本最大級!全国大学サッカー部データベース

    300校を超える大学が君の入部を待っている

    SNSでも最新の情報を発信しています
    ぜひフォローしてください