2026/09/17

学び×資格マップ#2:サッカー部のまま、体育の先生になれる?教員免許へのリアルなロードマップ

この記事は10分で読むことができます

白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員

大学3年の夏、私は教員になる道から一度降りた。

英語の先生を目指して、教員養成に強い大学へ入学し、教職課程の授業を受けていた。それでも3年の夏、方向転換して「サッカーに関わる仕事」を目指すことに変えた。

進路を変えたこと自体は、いまもまったく後悔していない。むしろ教員を本気で目指して挑戦したからこそ、見えたことも多かった。

ただ、ひとつだけ思うことがある。「先生になるまでの道のりと現実を、もっと早く具体的に知っておけばよかった」ということだ。

今回の題材は、希望者の多い「体育の先生」。
なり方の全体像から、大学生活の現実、サッカーと両立した先輩の実例まで。「なんとなく」で選ばないための材料を、順番に整理していく。

高校1・2年生のいまだからこそ、いろんな選択肢を考えるきっかけにしてほしい。

INDEX

1. 体育の先生になるまでの、5つのステップ

まずは全体の流れから。

1. 保健体育の教職課程がある大学・学部へ進む
2. 大学で必要な授業を受け、単位を取る
3. 教育実習などで学校現場を経験する
4. 条件を満たして教員免許状の授与を受ける
5. 採用選考を経て、学校で働く

ここで知っておいてほしいのは、大学に入れば、自動的に教員免許を取れるわけではないということだ。

まず、教員免許を取得できる大学・学部を選ぶ必要がある。そして入学後は、スポーツや身体について学ぶ専門科目だけでなく、教育の仕組み、生徒との向き合い方、授業のつくり方なども学んでいく。模擬授業や課題にも取り組み、最後は実際の学校で教育実習を行う。

体育が得意だから取れる資格でもないし、サッカーを長く続けてきたから取得できるわけでもない。自分ができることを、どうすれば相手に伝えられるのか。運動が苦手な生徒に、どんな声をかければいいのか。

体育の先生を目指す4年間は、そんなことを学ぶ時間になる。

2.「67単位」が意味する大学生活

文部科学省の案内では、大学卒業程度の一種免許状を取得する場合、小学校・中学校・高等学校では、教科や教職に関する科目などを合わせて67単位以上修得するのが一般的とされている。

67単位

数字だけでは、まだ実感しにくいかもしれない。
でも、大学でも本気でサッカーを続ける選手にとっては、簡単に流せない数字だ。

朝から授業を受けて、夕方から練習へ行く。遠征や試合の翌日にも授業がある。教職課程の必修授業が、練習時間と重なることもあるかもしれない。

さらに教育実習がある。実際の学校に入り、授業を準備し、生徒の前に立つ。先生方から指導を受けながら、自分が本当に教職を目指したいのかと向き合う時間でもある。

中学校教諭の普通免許状を目指す場合は、原則として特別支援学校や社会福祉施設などで7日間以上の介護等体験も必要になる。

サッカー部の活動。大学の授業。教職課程。教育実習。そして、卒業後の採用に向けた勉強。全部に本気で取り組むのは簡単ではないし、学年が上がってサッカー面でも大事な時期に、部活動を長期間離れる必要が出てくる。

教育学部などは必修科目に教職課程の授業が組み込まれており、自動的に教員免許を取得できるカリキュラムになっている。一方、他学部では通常の授業に加えて追加で教職課程を取ることになるので、授業量は増える。

「とりあえず教員免許」と考えている人も、まずはその現実を知ったうえで考えてみてほしい。

3. 実例:サッカー部から体育の先生になった先輩たち

「両立は大変そうだ」。ここまで読んで、そう感じたかもしれない。
でも、実際にやり切った先輩たちはいる

教員採用に強く、全国でもトップクラスの採用数を誇る埼玉県の文教大学では、3年生のシーズンが終了したタイミングで、一時引退(復帰する前提)・完全に引退・引退せずに活動継続を選び、それぞれのキャリアプランを考えたうえで、学生自身が判断をしている。いずれのパターンでも、実際に教員になった例は多くある。つまり、どれを選ぶにしても自分次第で挑戦は可能だ。

今回は「教員」にフォーカスを当てているが、これは就職活動や他の資格取得も同様である。基本は4年間の活動が前提になるが、多くの選手は自分で時間を作りながら、サッカー部での活動とうまく両立しているのが実情だ。

大学は高校と違い、授業の取り方も、授業以外の時間の使い方も、すべて自分でマネジメントする。
自分の考え方で、その4年間は大きく変わってくるだろう。

だからこそ、大学でもサッカーを続けたい君に、一番確認してほしいことがある。

そのサッカー部から、実際に体育の先生になった先輩はいるか。

大学の資格ページを見れば、免許を取れるかどうかは分かる。でも、どう両立しながら教員への道を切り開いたのかまで知ることができれば、それはとても良いモデルケースになるはずだ。

練習参加やオープンキャンパスへ行ったら、スタッフや選手に聞いてみよう。
・「教職課程を取っている部員は何人いますか?」
・「教育実習の期間は、チーム活動をどうしていますか?」
・「サッカー部から体育の先生になった卒業生はいますか?」

「両立できますか?」と聞くだけでは、「できます」で終わってしまう。実際に両立した先輩がいるのなら、その人がどんな4年間を過ごしたのかまで聞いてみてほしい。大学1年生から何を準備したのか。試合が続く時期に、どうやって勉強時間をつくったのか。

先輩が通った道は、君が入学したあとの生活を想像する材料になる。大学選びで絶対に見落としてほしくない。

4. 大学案内の「取得可能」を、もう一歩だけ読む

気になる大学を見つけたら、「教員免許を取れるか」だけで検索を終わらせず、もう少し先まで見てみよう。

最初に確認したいのは、自分が志望する学部・学科で、どの免許を取れるのかだ。
・保健体育の教員免許を取得できるか
・教職課程に人数制限や学内選考があるのか

大学全体では取得できても、自分が入りたい学科では対象になっていないことがある。
必ず、各大学のHPから取得できる資格を確認してみよう。

次に見たいのが、教員採用への支援だ。教員免許を取ることと、実際に先生として採用されることは別の話になる。

公立学校の常勤教員を目指す場合は、教員免許状を取得済み、または取得見込みの状態で、都道府県や指定都市の教育委員会が行う採用選考を受けるのが基本だ。自治体によって違いはあるが、筆記、面接、小論文、模擬授業、実技などが行われる。

大学のホームページに「教員採用に強い」と書かれていたら、数字の中身も確認してみてほしい。教員免許の取得人数?採用試験の合格者数?大学全体の数字なのか、保健体育の実績なのか。

表面上の情報だけではなく、もう一歩だけ調べてみる。その姿勢が、大学選びの精度を上げていく。

5. 高校1・2年生の今から、できること

まだ志望校を決める必要はないし、体育の先生になると今ここで決め切る必要もない。でも、少しでも興味があるなら、選択肢を残す準備は始められる。

まず「なぜ体育の先生が気になるのか」を、きれいな言葉でなくて良いので、ぜひ考えてみよう。

(例)
サッカーを教えたいから。
尊敬している先生がいる。
子どもの成長に関わりたい。
スポーツに関係する仕事をしたい。

特に高校2年生なら、気になる大学を3校選び、次の項目を比べてみてほしい。
全部埋まらず空欄があれば、それがオープンキャンパスや練習参加で聞く質問になるし、LINEの相談窓口を活用して情報収集してほしい。
1. 志望学科で保健体育の免許を取れるか
2. 卒業生の採用実績
3. 教職課程の履修条件
4. サッカー部に両立した卒業生がいるか

志望校を考えるとき、サッカー面と学びたいことを掛け合わせて絞っていこうとお伝えしているが、志望校に悩む皆さんにこそ、学びたいことから絞っていく方法をおススメしたい。

そうすることで、ただなんとなく学力が高かったり、サッカーが強い大学名を3つ並べるだけだった進路選びが、少しずつ「自分が過ごす4年間」の比較に変わっていく。

6. 今週の問い

みんなが将来やりたいこと、大学で興味をもって学べそうなことは、なんだろう?

冒頭に書いたように、私は教員を目指す道から、サッカーに関わる仕事へ進路を変えた。変わってしまってもまったく問題ないし、やりたいことが変わる人は多くいるのが実情だ。

いまの時点でやりたいと思うことや興味があることに思いっきり挑戦することで、見えることもたくさんある。だからこそ、ただなんとなく決めるのではなく、今の自分と向き合って、少しでも充実した「自分が過ごす4年間」を考えてみてほしい。

もちろん大学の就職の強さも大切ではあるが、それがすべてを左右するわけではない。
本当に大切なのは、自分がしたいことを思いっきりできる環境かどうか。

自分の道を切り拓くのは大学の名前ではなく、自分自身だと、いまでも信じている。

7. MOISH内アクション

・MOISHの大学検索で、サッカー面から気になる大学を3校選び、「気になる」に追加してみよう
・3校の大学公式HPを開き、「志望学部学科で保健体育の教員免許を取れるか」「卒業生の採用実績」を確認しよう
・教職課程とサッカー部を両立した先輩がいるかなど、HPだけでは分からないことは、LINE相談窓口で「体育の先生を考えている」と送って相談してみよう

体育の先生を目指せる大学を探す。
そのときに見てほしいのは、「取得可能」の4文字だけじゃない。
サッカーを続けながら、先生になる準備を続けられる4年間があるか。

今回は体育の教員免許を題材に届けたが、それに限らず他の分野でも根本は変わらない。
そこまで見て選んだ大学なら、君の進路は、きっと大学名だけで決めたものではなくなる。

白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員

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