2026/09/24

学び×資格マップ#3:トレーナー・理学療法士──怪我からの復帰、選手を支える仕事

この記事は13分で読むことができます

白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員

ケガをしたとき、復帰まで一番近くで支えてくれた人を覚えているだろうか。

痛みが引かず、不安になる。別メニューが続き、仲間の練習を外から見る。復帰したあとも「また痛めるかもしれない」と怖くなる。

そんな選手に向き合うのが、トレーナーや理学療法士をはじめとする「支える仕事」だ。

ここで一つ、進路支援の現場から伝えておきたい。これまで多くの高校生の進路相談に乗ってきたが、「トレーナーになりたい」と話す生徒のほとんどが、その資格や仕事の種類を把握していなかった。言葉だけが先に歩いている。

しかも、ひと口にトレーナーと言っても、役割も資格も同じではない。大学で学びながら選手と学生トレーナーを両立する道もあれば、選手を離れてスタッフとしてチームを支える道もある。理学療法士を目指すなら、授業や臨床実習が多く、サッカー部との両立は一気に難しくなる。

今回は、大学サッカーの具体例を交えながら、「選手を支える仕事」と、その道を目指す大学4年間のリアルを考えていく。

INDEX

1.「トレーナー」は、ひとつの仕事ではない

「将来はトレーナーになりたい」。そう思ったら、まず知っておきたいことがある。

「トレーナー」に、職種や国家資格としての定義はない。現場が、選手を支える複数の専門職をまとめてそう呼んでいる。呼び名だけが一人歩きしているのだ。

同じチームで「トレーナー」と呼ばれていても、ケガの応急対応を担う人、医療機関でリハビリを行う人、筋力やスピードを高める人、学生として現場を補助する人では、学ぶ内容も責任の範囲も違う。

まず全体像を整理しよう。

1. アスレティックトレーナー(AT)──競技現場と医療をつなぐ

日本で代表的なのが、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、いわゆるJSPO-ATだ。

ATの仕事は、テーピングやマッサージにとどまらない。日頃から選手の状態を観察し、ケガを予防する。受傷時には重症度を見極めて安全を確保し、必要なら医療機関へつなぐ。治療後は、医師や理学療法士と情報を共有しながら、走る、止まる、切り返す、ボールを蹴るといった競技動作へ段階的に戻していく。

この「日常生活には戻れた選手を、競技へ戻すための過程」をアスレティックリハビリテーション、またはリコンディショニングと呼ぶ。

ここは勘違いしやすい。JSPO-ATは国家資格ではなく、単独で医学的診断を下す資格でもない。医師、理学療法士、S&Cコーチ、監督などをつなぎ、選手が安全に競技へ復帰できるよう調整する。それがATの大きな役割だ。

2. S&Cコーチ──「治す」より「強くする」を専門にする

ストレングス&コンディショニングの専門家は、筋力トレーニングだけを教える人ではない。

選手の筋力、ジャンプ、スプリント、持久力、左右差、疲労を測り、競技スケジュールに合わせてトレーニングの量と強度を設計する。サッカーでいえば、加速、減速、方向転換、反復スプリント、試合間の回復まで対象だ。

代表的な認定資格には、国内のJATI-ATIや、国際的に認知されるNSCA-CSCSがある。NSCA-CPTは主に個人へのトレーニング指導を想定した資格で、チームや競技者のパフォーマンス向上を中心に扱うCSCSとは重点が異なる。

S&Cは医療職ではない。ケガの診断や治療には踏み込まない。メディカルスタッフから共有された制限の中で身体能力を戻し、再受傷しにくい状態と競技パフォーマンスをつくる。役割はそこだ。

3. メディカルスタッフ──「医療を担うチーム」の呼び名

「メディカルトレーナー」という言葉は現場でよく使われる。だが、そんな名前の国家資格は存在しない。

実際には、医師を中心に、理学療法士、柔道整復師、看護師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師、JSPO-ATなどが、それぞれの専門性と資格の範囲で選手を支える。

関東大学サッカー連盟の規約でも、医療面を相談できる医師または歯科医師をメディカルアドバイザーとして置き、医療手当などを担うメディカルスタッフには、理学療法士、柔道整復師、鍼灸師、JSPO-ATなどの資格を求める考え方が示されている。

つまり、「メディカルスタッフになりたい」だけでは進路は決まらない。診断を担いたいのか。リハビリを担いたいのか。施術を通じて支えたいのか。そこで選ぶ学部も資格も変わる。

4. 理学療法士──医療的リハビリと競技復帰の土台をつくる

理学療法士は、身体機能や動作を評価し、運動療法などを通じて機能の回復を支える国家資格だ。医療の場では医師の指示のもとで理学療法を行う。

スポーツ分野では、関節の動き、筋力、痛み、バランス、歩行や走行動作などを評価し、まず日常生活や基本動作を安全に行える状態を目指す。その後、ATやS&Cコーチと連携して、競技特有の負荷へつなげる流れが多い。

ただし覚悟は必要だ。理学療法士の資格を取れば、自動的にプロチームで働けるわけではない。スポーツ外傷、競技動作、トレーニング科学、救急対応。追加で学ぶ領域は多く、現場経験も欠かせない。

5. 学生トレーナー──資格より先に「安全に支える姿勢」を学ぶ

学生トレーナーに、統一された資格はない。チーム内の立場を指す言葉だ。所属大学やチームによって、任される仕事は大きく異なる。

専門知識を学ぶ、貴重な現場になる。同時に、学生が一人で選手のケガを診断したり、治療方針や復帰時期を決めたりしてはいけない。異変を早く見つけて有資格者へ報告すること。記録を残すこと。緊急時の手順を理解していること。これも重要な専門性だ。

大学を比べるときは、「学生トレーナーがいるか」だけでなく、医師や有資格トレーナーの指導下で活動しているかを必ず確認したい。

ケガから復帰まで、5つの役割はどうつながる?

試合中に膝を痛めた選手が、復帰するまでを考えてみよう。
1. AT・救護担当が現場で安全を確保し、受診の必要性を判断して医療機関へつなぐ
2. 医師が診断し、治療方針や医学的な制限を示す
3. 理学療法士が痛み、可動域、筋力、基本動作の回復を支える
4. ATが走行、方向転換、対人動作など競技復帰に必要な段階を組み立てる
5. S&Cコーチが筋力・パワー・持久力を試合レベルへ戻す
6. 監督・コーチを含む関係者が情報を共有し、練習参加と試合復帰を段階的に進める

競技復帰を、一人のトレーナーの感覚だけで決めることはない。医学的な安全性、身体機能、競技能力、選手本人の不安、練習での反応。すべてをチームで確認する。

現場では役割が重なることもある。それでも「何を学んだ人か」「どの資格で、どこまで担当できるか」は、別々に確認する必要がある。

だから順番が大事だ。「トレーナーになれる大学」を探すのではなく、自分は予防、救急対応、医療的リハビリ、競技復帰、身体能力向上のどこを担いたいのかまで考える。そこまで掘れば、選ぶ学部や資格が具体的になる。

実例➀:国際武道大学ー「プレーする」と「支える」を、同時に経験する

大学サッカーには、選手でありながら学生トレーナーや学生コーチを務める例がある。

国際武道大学では、選手として練習や試合に取り組みながら、トレーナー、指導、審判、マネージャーなど、ピッチ外の役割にも挑戦できる環境がつくられている。選手兼学生トレーナーとして活動する学生や、選手を続けながら下位カテゴリーを指導する学生コーチもいる。

これは、単に仕事が増えるという話ではない。

自分がケガをしたときに感じた不安。復帰を急ぎたくなる気持ち。練習から外れる悔しさ。選手として経験しているからこそ、支える側に回ったときに分かることがある。

一方、兼任は甘くない。練習時間と実習、チームの仕事、自分のコンディション管理が重なる。どちらも中途半端にしないためには、チームの理解と本人の時間管理が欠かせない。

国際武道大学は、トレーナー養成に限らず、指導者、審判、マネージャーなど、サッカーに多角的に関わる学びを重視している。卒業後にサッカー界のフィジカルコーチやスタッフとして活動する人がいる。目指す道を具体的に考える、良い材料だ。

2. 選手を引退しても、学生トレーナーという道がある

大学サッカーへの関わり方は、選手だけではない。

順天堂大学、IPU・環太平洋大学、びわこ成蹊スポーツ大学、帝京平成大学、国際武道大学。こうした大学には、学生がトレーナーやサポートスタッフとしてチームに関わる道がある。

高校まで選手だった人が、大学で学生トレーナーへ転向するケースもある。プレーは引退する。それでも、関わり方を変えてサッカーを続けられる。

学生トレーナーの仕事は、華やかなものばかりじゃない。練習前の準備、テーピング、日々の記録、リハビリの補助、用具の管理。積み重ねの毎日だ。選手の状態を見続け、異変に気づき、必要な相手へつなぐ責任もある。

その経験は、資格の勉強だけでは身につかない「現場を見る力」になる。

大学を調べるときは、選手一覧だけでなく、スタッフ一覧や学生スタッフ紹介も見てみよう。自分が目指したい役割の学生がいるか。その人がどの学部で、どんな資格を目指しているか。卒業後にどんな進路へ進んだか。そこまで確認すると、4年間のイメージが具体的になる。

実例②:帝京平成大学──サッカー部を実習の現場にする

帝京平成大学には、アスレティックトレーナーや柔道整復師などを目指す学びがあり、サッカー部を実地研修の場として活用できるケースがある。

選手としてプレーしながらトレーナーを目指す学生にとって、日常のチーム活動と学びがつながるのは大きい。練習で起きたことを授業の知識と結びつけ、学んだことを現場で確かめられる。

ただし、同じ大学でも学科によって負担は違う。アスレティックトレーナー系や柔道整復系では両立例があっても、理学療法や救急救命など、必修授業や実習の多い学科では競技との両立が難しくなる。

「この大学なら両立できる」という見方は危うい。自分が進む学科で両立できるか。確認は、学科単位で行う必要がある。

3. 理学療法士と大学サッカーの両立が難しい理由

理学療法士は国家資格だ。養成課程で身体の構造や運動、病気、リハビリについて学び、臨床実習を経験し、国家試験の合格を目指す。

難しさは、勉強量だけではない。
・必修授業が多く、時間割の自由度が低い
・学内演習や課題が多い
・医療機関などで行う臨床実習がある
・実習先や期間によっては、通常の練習時間に参加できない
・国家試験の準備と、競技生活の重要な時期が重なる

大学サッカーでは、学年が上がるほどチーム内の競争も役割も大きくなる。その時期に長期間練習へ出られなければ、選手としての立場に響く。

だから「入部できる」だけでは足りない。4年間を通して、どこまで続けられるのか。そこまで確認する必要がある。

実例③:北陸大学──両立の道が切り拓かれるか

北陸大学では理学療法学科の設置後、同学科に所属しながらサッカー部へ入部する学生が出ている。

新しい取り組みだ。大学側も学生を受け入れながら、両立の形を探っている。学年が上がり、専門科目や実習が増えれば、練習に参加しにくい時期は来るだろう。それでも、教員側に現役選手の挑戦を受け入れたいという姿勢がある。これは大きな一歩だ。

ここで大切なのは、「両立できる」「できない」を一言で決めないことだ。
・何年次から実習が始まるのか
・実習期間はどれくらいか
・その間、チーム活動をどう扱うのか
・現在両立している先輩は、週に何回練習へ参加できているか
・チームと学科の先生が、どこまで連携しているか

新しい学科や取り組みでは、制度が毎年変わることもある。最新の状況は、学科とサッカー部の両方に確認したい。

実例④:城西国際大学──「入部できる」と「毎日練習できる」は違う

城西国際大学でも、理学療法士を目指しながらサッカー部との両立に挑戦する選手がいる。

授業や実習の時期によっては、練習へ参加できないタイミングが生まれる。選手として所属できても、チームと同じスケジュールで毎日活動できるとは限らない。

この違いは、大学選びで見落とされがちだ。

オープンキャンパスや練習参加では、「両立できますか?」だけでなく、次のように聞いてみてほしい。
・理学療法学科に所属するサッカー部員は何人いるか
・何年次の、どの時期に練習参加が難しくなるか
・実習期間中は、チーム内でどのように扱われるか
・公式戦メンバーを目指しながら両立した先輩はいるか
・卒業まで続けた先輩は、どんな時間割で生活していたか

具体的に聞く。それだけで、入学後の生活が見えてくる。

4. どの道にも正解はない。決め手は優先順位だ

選手を続けながら学生トレーナーを経験する道。
選手を離れ、学生トレーナーとしてチームを支える道。

理学療法士の国家資格を最優先し、練習に参加できない時期も受け入れる道。
一度競技に集中し、卒業後に専門学校や大学院で医療・トレーナー分野を学ぶ道。

どの道にもメリットと難しさがある。資格名や大学名で決める前に、自分が4年間で何を一番大切にしたいのかを考えることだ。
・選手として、どのレベルまで挑戦したいか
・支える仕事の中で、どの役割に興味があるか
・国家資格を取りたいのか、スポーツ現場の資格を目指したいのか
・練習に出られない期間があっても、資格を優先できるか
・卒業後、病院、スポーツ現場、一般企業のどこで働きたいか

この順番で考えると、自分に合う大学の条件が少しずつ見えてくる。

5. 今週の問い

君がケガをした選手を支えるなら、どんな役割で関わりたいだろう。

身体を強くしてケガを防ぐのか。ケガの直後に対応するのか。リハビリを支えるのか。不安な選手の話を聞き、復帰まで伴走するのか。

「トレーナーになりたい」の先にある、自分が支えたい場面を考えてみよう。

6. MOISH内アクション

・MOISHの大学検索で、トレーナー・理学療法士に関係する学部や資格を持つ大学を3校、「気になる」に追加する
・3校の公式サイトとサッカー部ページを開き、希望学科と学生スタッフの情報を確認する
・HPで分からないことは、LINE相談窓口へ「トレーナー/理学療法士を目指しながらサッカーを続けたい」と送って相談する

サッカーを続けるのか。支える側へ回るのか。両方に挑戦するのか。

答えは一つじゃない。だからこそ、先輩の実例まで確かめて、自分の4年間で選んでほしい。

支えたい場面が決まれば、見るべき大学は絞れる。

白井 俊之

東京都大学サッカー連盟 事務局担当
埼玉県大学サッカー連盟 理事
(公財)埼玉県サッカー協会 第1種委員
(一社)関東大学サッカー連盟 社会貢献委員

    本気の第一歩を!

    LINE公式アカウントでは
    大学情報を検索したり
    いつでも気軽に相談できます
    LINE サンプル

    日本最大級!全国大学サッカー部データベース

    300校を超える大学が君の入部を待っている

    SNSでも最新の情報を発信しています
    ぜひフォローしてください